錦織綱場で集めた材木を川下の犬山方面へ流すために藤つるで筏に組んだ技術からも、山の資源を活用する人の活動と森林環境が上手くバランスをとっていた様子がうかがえます。
八百津町は、水、川、風のチカラを上手に活用し、自然のリズムに合わせた暮らしの中で繁栄した町です。
現代では経済活動や生活の変化に伴い価値観も生活様式もかわりつつありますが、自然と調和した暮らしは、持続可能な未来を築くために重要なアプローチです。昔の生活に倣う、自然環境の中にある資源とのサスティナブルなつきあい方について考えてみましょう。

experience01自然環境

山奥の町で舟形のだんじり
山奥の町で舟形のだんじり 山奥のまちで舟型のだんじりというのが不思議に感じられますが、現在の交通網から隔絶された八百津町は、町を東西に流れる木曽川沿いに「錦織湊」「黒瀬湊」の2 つの湊を持ち、中世末期から木曽川舟運で栄えた町だったという歴史があります。
八百津町を流れる蘇水峡(そすいきょう)は、全長約2キロメートルの峡谷です。
木曽川が作り出した峡谷としてはもっとも下流にあり、木曽川の流れがここから緩やかになるため、かつては材木を筏に縛り付け、犬山・名古屋方面に運ぶ綱場としての機能を果たしていました。
先人たちは、 水・川の力を巧みに使いこないこなし、現在とは違った環境への負荷も小さい方法で山から海へ荷物を運んでいました。 八百津だんじり祭は、木曽川の舟運で栄えた象徴として元禄年間に筏乗りの安全祈願のために始まったとされています。

experience02林業

林業関係者泣かせ「藤蔓」の活用
林業関係者泣かせ「藤蔓」の活用 木曽川上流で伐採された木材を、藤蔓を活用して桴に組み、さらに下流へと運んでいた歴史がある八百津ですが、それに倣ってか八百津だんじり祭のだんじりの接合部分も藤づるで締め付けてあります。
毎年新しい藤蔓で締めなおし、締め具合を調整する「山絡げ」は、祭前の大切な作業です。
しかし、山の中での藤蔓は、巻きついた立木を圧迫し歪な形にしてしまう厄介者。さらに林業従事者を危険にさらします。一本の木に巻きつくだけではなく、周りの木にも巻きつくため、伐倒の邪魔になるだけでなく、事故に繋がることもあるのです。かつて藤蔓は、筏を組む際だけではなく、生活の中でも活用されてきたり、集落総出で山林に繰り出し行った下草刈りなどの際、見つけると必ず切られていましたが、最近では放置されている山が多く、スギ林でも、放置されて育った藤の花が咲くということもあるようです。現在の林業にとっては山を荒らす原因になってしまっている「藤蔓」。
その植物としての特徴を学びながら、昔の生活に倣う、藤の蔓とのサスティナブルなつきあい方について考えてみましょう。

experience03歴史・文化

筏乗りたちの安全祈願
筏乗りたちの安全祈願  300年以上の歴史を誇る「八百津だんじり祭」は、木曽川の舟運で栄えた象徴として元禄年間に筏乗りの安全祈願のために始まったとされています。
1艘の船の形になる3 両の巨大な山車が八百津町役場前から八百津の産土神である大舩神社までの町内を曳手の大きな掛け声とともに練り歩きます。
昭和18年12月、兼山ダムの完成により、舟が全く姿を消して、船頭はついに水から陸に上がって木曽川の様相も変わり、黒瀬湊も川底深く水没しました。長い歴史を持つ黒瀬舟の舟運は、ことごとく姿を消して、幕を閉じました。
今はその名残の湊の灯台が川上神社の常夜灯として舟の安全を祈っています。

experience04ヒト

木曽川を利用した水運と、黒瀬街道などの道を使った陸上交通を中心に発達した町
木曽川を利用した水運と、黒瀬街道などの道を使った陸上交通を中心に発達した町 八百津は、木曽川上流で伐採した木材を筏に組む要所であったのと同時に、様々な商品も交易されていた地でもありました。
「錦織湊」は江戸期からは木曽木材の網場・筏場として発達した川湊で、尾張藩錦織材木奉行が置かれており、木曽川舟運最上流の湊である「黒瀬湊」は商業の町として発展し、現在では酒蔵や和菓子屋が立ち並ぶ「八百津町の本町通り」にあたる、黒瀬湊から北に伸びる道沿いでは定期市が開かれ、問屋や商家が立ち並んでいました。
舟運で栄えた徳川元禄時代にだんじり祭りも盛んになり、人と物と金で八百津が潤った時代となりました。

experience05地元の味

東西文化交流の中での地酒の役割
東西文化交流の中での地酒の役割 山国の特産物は黒瀬街道を人馬に背負われ、中継地の久田見を経て木曽川の黒瀬湊へと運ばれ、舟に積まれて下流各地へと送られていました。そして下流に着いた舟には、塩などの移入品が積み込まれ、満帆に風を孕めて上航し、黒瀬湊からは陸路で山国へと運ばれました。
物流のハブとなり、人も行き交うようになったこの場所では、東西文化の交流が盛んに行われ、様々な人が集い、酒を呑みかわすことで交流を深めていました。

開催イベント一覧List of events